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2021年08月27日の記事は以下のとおりです。

聖書の言葉と素晴らしいサイトのこと

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漫画の中で登場する言葉について、作中で解説しておくべきなのでしょうが、
スマホユーザーでも読むに不自由ないフォントサイズで納めるのが難しかったのでここに解説を載せておきます。

言葉に敏感な人が調べてくれたり、わざわざ私のサイトを覗いてくれる殊勝な方に知っていただければいいなと。

 

「嗣業(しぎょう)」とは
"神によって与えられた財産、特に土地を指し、次世代へと受け継がせて行くべきもの" という意味です。

ほぼ聖書の中でしか使われない難しい言葉で、
聖書の元のギリシア語から苦心して新しい日本語として訳した言葉だと感じます。

土地こそが最も重要な財産であるという古代から続くイスラエルの民(ユダヤ人)の悲願が凝縮されたような言葉でもあります。

 

「嗣業」の聖書内での行間から見える意味、扱われ方は出典の箇所によって変わってくるのですが、
今回は特に旧約聖書『申命記』の32章における例を挙げてみます。

 

「いと高き者は人の子らを分け、諸国民にその嗣業を与えられたとき、イスラエルの子らの数に照して、もろもろの民の境を定められた」
『申命記』32章8節

 

「ネストレ・アーラント」という現代の全ての聖書の基準となるギリシア語聖書では、
「嗣業」の元の言葉に “κληρονομίας(遺産)” という語が使われています。

これが英訳になると “inheritance (相続財産・遺産)” という言葉に置き換えられます。


しかし「相続財産」や「遺産」という日本語は、何やら即物的というか、神から賜ったものという神聖さに欠けた印象の言葉です。
これは聖書を翻訳した先人たちも同じ感覚を抱いていたのでしょうか、新しい日本語を作り上げて意味の特別さを補っています。

苦心したその言葉の翻訳の変遷を簡単にまとめてみると…

 

・明治14年 ヘボン、S・ブラウンらによる翻訳委員会訳の明治訳新約聖書、通称「(明治)元訳」

⇒產業

・明治20年 文語訳聖書

⇒產業

・明治43年  エミール・ラゲ神父訳 

⇒相傅(ゆずり)の地

・昭和44年? 関根正雄訳

⇒嗣業


「產業」とは中国語の意味を指します。(日本語の意味とは異なるので初めは当惑しますね)“生活のもとになる資産”、特に不動産のこと。

漢文由来の意味が汲まれていて現代人には馴染みのない言葉なのですが、
漢字の持つ意味の奥深さ、それゆえに無限に言葉を創造できる日本語の懐の深さに感じ入ります。


さて、こんなことをどうやって調べられたのかというと、
『ばべるばいぶる(多言語聖書閲読)』という素晴らしいサイトのおかげです。

https://www.babelbible.net/bible/bible.cgi

 

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管理人さん自ら設計したCGIによって、日本語だけでなく、世界中様々な翻訳の聖書を瞬く間に検索・表示できるとんでもない仕様のサイトです。

明治期からの日本の聖書を手作業でテキストに起こしたり、テキスト化できていないものは画像PDFファイルとして用意されている恐ろしい充実ぶり。

聖書を翻訳という文学的学問の側面から切り出したような、素晴らしい研究資料です。


使い方は簡単。

1.旧約聖書と新約聖書のうち、「書名」と章番号を指定し、「章表示」ボタンを押すだけ。

2.「聖書1」「聖書2」で表示したい翻訳書名を指定すると、その章全体を比較表示することもできます。
(もちろん一つだけ表示させることも可能です。その場合、片方はブランク)


3.「節表示・修正」で任意の節のボタンをクリックすると、
その小節を他の翻訳書の同文から比較表示させることもできます。スゴイ!

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(巨大な画像ですが、そのwebキャプチャ)

 

『ばべるばいぶる』を知ったのがいつ頃だったかも記憶にないのですが、調べものをしていて偶然見つけて、
「すごいサイトがあるなぁ…」と、管理人さんの研究意欲にいたく感銘を受けて、それ以来度々利用しています。


管理人さんは植田真理子さんという方です。

その管理人さんについては、また後日お話をまとめて書き上げようと思います。

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