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Pearl

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先のエントリーでMediæval Bæbesについて語ったので、つい懐かしくなり色々聴き直していました。

高校生の頃からのファンなので、ベイブスの曲を聴くとその時々の自分の記憶まで蘇ります。

初期のMediæval Bæbesの曲の中でも大好きなうちの一つ。

14世紀英国中世詩『真珠(Pearl)』より

 

物語の概要はこんな感じ。

幼い娘を失って悲嘆に暮れていた男がある日、夢の中で美しいレディに成長した娘と再会する(娘の名が真珠)

そこは宝石がキラキラ輝く小川の流れる、天国のような箱庭だった。

娘は父に喪失を克服するよう語りかける。

それでも父は娘の元へ行きたいと小川を飛び越えようとした瞬間、夢は覚め現実に戻る。

参考wiki:『Pearl (poem)』

https://en.wikipedia.org/wiki/Pearl_(poem)

 

Mediæval Bæbesの曲では原文の第三節が歌われています。

(現代英語訳:dmstanton.freeola.com/pearl/pearl_ne

著者不明ですが、唯一の原典『コットン写本』に同じく収録されている『ガウェイン郷と緑の騎士』と同じ作者だと考えられています。

後者の方が有名ですね。私もアーサー王物語の中で一番好きな話です。

 

『Pearl』は極めて精巧な構成がされており、1212行の長さ、12節で成り立っている。

天国の門は12ハロンの長さ、12か所ありそれぞれ真珠でできているという、12という数字への象徴性が込められています。

大英図書館のサイトで挿絵の高解像度写真が見れるので興味あれば是非見てみてください。

大英博物館コレクション:『Pearl』

https://www.bl.uk/collection-items/pearl

 

ちなみに『ガウェイン郷と緑の騎士』の挿絵も閲覧できます。

大英博物館コレクション:『Sir Gawain and the Green Knight』

https://www.bl.uk/medieval-literature/articles/sir-gawain-and-the-green-knight-an-introduction

 

中学時代、アーサー王物語にハマって色々読み漁りましたが、この物語が一番痛快でガウェインがカッコイイので好きでした。

大変勉強になる解説はこちらでどうぞ。

参考リンク:中英語アーサー王ロマンス『ガウェイン卿と緑の騎士』

http://arthuriana.jp/legend/sggk.php

古典詩の世界はじっくり勉強したいところです。

Alba

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管理人が十数年かけて描いている漫画『HATSHEPST』

http://www.cristinmilites.com/comic/index.html

 

この物語の重要人物になるストラウスという軍人がいます。

彼のフルネームは "イーゴス・アルバ・ストラウス"

 

イーゴスとは一定以上の年齢の滋賀県民には懐かしい、今はなき観覧車の名前、
そしてミドルネーム "アルバ" は私の大好きなイギリスの古楽グループ Mediæval Bæbes の曲から取りました。


「アルバ(Alba)」はオック語で "夜明け" という意味。

Mediæval Bæbes の1998年の2ndアルバム『Worldes Blysse』に収録されている、この短く美しい曲が大好きなのです。

歌詞は12世紀後半に南仏にいたギラウト・デ・ボルネイユというトルバドゥール(宮廷詩人)によります。


"Alba" は古オック語詩のジャンルのひとつで、不義の密会をしていた男女が夜明けと共に別れねばならない切情を謳ったものです。

要は騎士と高貴な奥方の不倫で、詩はその密通の現場の見張り番の口から語られる体をしています。
「おい親友、もうじき夜が明けるぞ」みたいな忠告を繰り返す感じです。


この見張り番のことをオック語では "guaita" と呼びます。

"guaita"の他にこのジャンルの定番のキャラとして、奥方の夫や騎士に横恋慕する嫉妬深い恋敵が存在します。

この嫉妬深い恋敵を一語で表す言葉がオック語にはあるそうな。"lauzengiers” というそうな。

参考wiki:『Alba』

https://en.wikipedia.org/wiki/Alba_(poetry)

参考wiki:『アルバ』

https://ja.wikipedia.org/wiki/アルバ_(詩)

ギラウト・デ・ボルネイユのAlba詩には旋律が残されているので、 音楽の世界では彼の詩=Alba と呼ばれることが多いですが、正確にはAlbaばジャンル名なんだそうです。調べるまで知らなかった。

ギラウト・デ・ボルネイユの詩はその冒頭から "Reis glorios, verais lums e clartatz" とも呼ばれます。

参考wiki:『ギラウト・デ・ボルネーユ』

https://ja.wikipedia.org/wiki/ギラウト・デ・ボルネーユ

 

ちなみに古オック語詩の「アルバ」が伝播して、もう少し後の時代になると、夜明け前に別れなければいけない恋人たちの押し問答が小劇風の詩や歌に変わってゆきます。

それをフランスでは「オーバード」、ドイツでは「ターゲリート」と呼ぶそうな。

参考wiki:『オーバード』

https://ja.wikipedia.org/wiki/オーバード

 

さてAlbaは不倫の詩と知ったところで、

「はて、Mediæval Bæbesの曲を高校生の頃に聴いたときは、十字軍に参加している騎士の恋人を想い無事を祈る乙女の歌だったと記憶したが?」 と疑問が浮かぶ。

当時の歌詞集を久々に引っ張り出して確認すると、やっぱりそう書いてあるがな!

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もちろん古典を研究している彼女たちがそれを知らないわけがないので、 あえて少女チックな世界観を演出したのかなと思いました。

しかし不義の恋という "Alba" に隠された真実は、ストラウスの出生の事情やら今後のストーリーと絡んでいい感じだと気に入りました。

彼の名前にかこつけた小話でした。

音楽まとめブログ作りました

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以前から管理人の日記やTwitter上で好きな音楽に関するアレコレを呟いていましたが、
ログが流れるのが心惜しく、なんとか簡単にまとめてつなぎ留めておけないかなということで、音楽用のブログを用意しました。

更新は不定期、気まぐれになくなってしまうかもしれませんが、
私の好きな音楽をひっそり流してゆきます。

皆さんの琴線に触れるものが見つかればとても嬉しいです。

 

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